私の在処

スピリチュアル

個人の思考をコンピュータに移植すれば、『私』はコンピュータ内に形成できるのでしょうか。映画やドラマで良くあるシュチュエーションですが、実際に研究されているとも聞きます。おそらく、そう考える人々において、思考は私のすべてなのだと思います。そして、もしそうであるなら、つまり思考をコンピューターに移植することができれば、『私』は物理的限界を超えて、永遠に存在することができるのです。コンピューターに機械としての寿命があったとしても、データとなった『私』が、物理的限界を持つことはありません。

思考は私か

ここで問題になってくるのは、『私』とは何かということです。先にも述べているように、思考が『私』のすべてであるならそれは可能だと思います。ただ、『私』が思考以外にあるのであれば、その試みは風車に挑み掛かるドン・キホーテのように愚かです。

確かに物心ついた頃から、僕たちは思考と共に生き、思考を『私』だと思って生きています。では、物心のつく前、ハイハイする赤ちゃんだった頃、僕たちは『私』を持っていなかったのでしょうか。例えば、人間に限らず、発達した思考を持たない動物は『私』を持っていないのでしょうか。そのようには思えません。赤ちゃんだって、自分のために生命を維持しようと泣きますし、犬は自分の縄張りを守ろうとします。それは『私』という、核心的な何かが存在しているからだろうと思います。

確かに、彼らは思考や感情、つまり観念の複合体としての自我を持ってはいません。その自我を持ってはいないにも関わらず、『私』であり続けるからこそ、彼らは生存し続けているのです。そして、思考は『私』の在処ではないということになります。そうだとするなら、思考をコンピューターに移植して永遠に生きながらえようとする試みは、高度な知能を発達させたこそ陥る勘違いと言えるのではないかと思います。高度な知能が生み出した自我を、私であると勘違いしてしまうのです。

勘違いの構造

それは月と太陽の関係に似ているかも知れません。月と太陽は、共に空に輝きを放っています。しかしながら、自ら光を放っているのは太陽だけであり、月は太陽の光を反射して輝いているだけです。太陽を『私』、月を自我として考えて下さい。自我を私とみなすのは、月が自分で光を発していると考えるようなものなのです。他の例えでは、映写機とスクリーンの例えがあります。これは、深層心理学者のカール・グスタフ・ユングが言っていたことですが、今までは自分だと思っていたスクリーンに映っていた映像が本当の自分ではなく、スクリーンに光を投影し映像を生み出している映写機の方が、本当の自分であると彼は感じるようになったそうでです。

他にもスクリーンの例えで、良く似たものがあります。スクリーンに写っている映像を自我に例え、それは本当の自分ではなく、その映像を映しているスクリーンこそが本当の私であるというものです。この例えの伝えたいことも、ユングの例えとほぼほぼ同じだと思います。それまでは自分だと考えていたスクリーンに映る映像を本質的な『私』ではないとし、その映し出される映像として例えられる自我を成り立たせているもの、映写機であったりスクリーンであったりを、自我をより本質的な『私』としています。映写機とスクリーンは、より本質的な『私』に対する表現の違いに過ぎません。

私の在処

それでは、映写機とスクリーンに例えられた、より本質的な『私』とは何かということを考えていきます。というか、それは既にユングによって言及されています。ユングは映写機に例えたより本質的な『私』を、『セルフ』であると言っているのです。

ここで言うセルフとは自我のことではありません。ユングは自我を『self』と表記しました。同じセルフではありますが、ここで記載されるセルフは『Self』であり、頭文字が大文字になります。通常セルフは、『自己』や、『自分』、『自身』、『自我』などという意味です。各個人において私に関わることです。ただ、頭文字が大文字になることで、それは唯一のもの、固有名詞としてのニュアンスが付け加えられでいます。つまり、それは各個人を超えた『私』といっても良いもので、『自己』ないしは『真我』と言うべきものです。

ただ、真我を直接見ることはできません。何故なら、認識するものが真我だからです。認識する主体が、自らを認識することは通常はできません。月を眺める太陽が、月を眺める自分の姿を見ることのできないのと同じことです。だからこそ、真我の投影された自我を、人々は本当の『私』と思い込むのです。それは、自分のことを太陽だと思い込む月のように愚かです。自我を私だと感じるのは、真我の投影の結果だというを受け入れてみて下さい。その投影の結果を『私』だと勘違いしてしまっている事実自体が、本当の『私』の存在する場所を指し示しているのです。

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