高野山グルメ ランチ編

グルメ

高野山が好きで何度も記事にしているのですが、だいたいが小難しいもので読んでいても大して楽しくないと思います。しかしながら、実のところ、高野山は楽しいことで満載なのです。そう言う訳で、今回は高野山でのグルメについて書いていこうと思います。

精進料理

高野山を訪れる人のほとんどは、宿坊に泊まることになり、そこで振る舞われる料理のほとんどが精進料理です。ただ、僕の場合は日帰りで、宿坊に泊まって食事を頂くことはほぼありません。そういう訳でランチでも精進料理を食べます。

中央食堂 さんぼう

精進料理でこの店は外せないというお店が、『中央食堂 さんぼう』です。何が中央かというと、お店の立地です。金剛峯寺のほど近く、高野山宿坊協会の中央案内所や、銀行などある町の機能の中心にあります。それは、大門と奥之院の御廟のちょうど中央の位置であるとも言えます。だいたい片道5キロ程度の行程なので、行ったり来たりのベースキャンプのような場所になります。

高野山観光は自分の脚で歩いて回ることをお勧めしますが、限られた時間で多くの場所を回りたい場合や、足腰にあまり自信がないような場合は、レンタサイクルやバスの利用をお勧めします。

バスの1日フリー乗車券は高野山駅を出て左手の高野山駅前バス営業所窓口のみで買うことができます。大人 1,100円、小児 550円で、様々な特典も受けることができます。

他にも、高野山・世界遺産デジタルきっぷというようなものもあります。スマホでの利用限定ですが、指定の駅から高野山駅までの往復乗車券と、高野山内バスフリー2日乗車券、拝観施設割引サービス券、お土産、飲食代金1割引サービス券 、粗品進呈などの特典が受けれます。例えば、なんばからでしたら、3,140円と大変お得です。

話がだいぶ逸れてしまいましたが、中央食堂さんぼうに戻します。高野山のメインストリートから町役場の方へ、ほん少し歩くと左手にお店が見えてきます。見た目は、本当にただの食堂で、中に入ってもそれは変わりません。進歩や発展という慌ただしさから取り残された、あの頃の昭和の趣きがそこにあります。

三度訪問して、その度に驚きを感じる美味しさでした。胡麻豆腐や湯葉を上手く使ったお料理は未体験の美味しさです。

これは胡麻豆腐湯葉巻揚げというお料理を中心にした定食。随分前に食べたので今も扱っているかは知りませんし、お値段も変わっているだろうから書きませんが、やはり胡麻豆腐湯葉巻揚げが絵も言われない美味しさ。胡麻豆腐を湯葉で巻いて揚げたものですが、そんな食感は未体験。歯応えのある湯葉の中からトロトロになった胡麻豆腐が溢れ出し、掛けられた餡と絡まると鮮やかな味わいを生み出します。

こちらの方は、精進花籠弁当。副菜などは胡麻豆腐湯葉巻揚げと同じですが、副菜のバリエーションが少し増えます。もちろん副菜と侮るなかれの美味しさです。胡麻豆腐が真ん中に鎮座していますが、メインは天ぷらと言ったところでしょうか。もちろん精進料理なので、野菜などしかありません。しかし、完璧な火加減で甘味が衣の中で濃縮されています。ご飯は豆ご飯で、お代わりは追加注文になります。

ともかくここの料理に言えることは、出汁が美味いということ。精進料理ですから、かつお節などの動物性の素材を使わない精進出汁を使っていると思うのですが、これが凄まじく美味い。お吸い物を頂くと、黄金を口に含んだような気分になります。この出汁が、すべての料理に圧倒的美味しさを与えています。

それから、山上にある聖地の高野山で、物価は下界よりすべてが少し割高でが、この店はお値段もかなり抑えられています。先ずは、このお店からと言いたい名店です。

ことぶき食堂

メインストリートを奥の院方向に進むと、左手に見えてきます。割とカラフルで新しい目な店構に、昨今の外国人観光客を目当てに出店したばかりのお店かと思っていました。しかしながら、古くなった店舗をリノベーションしただけで、大正8年に自転車屋として創業し、二代目か料理店に業態を変更し、昭和31年に現店主のご両親が引き継ぎ、ご両親の引退を機に今に至るとのことです。なかなかの老舗のようです。

リノベーションしたばかりの店内は、高野山らしからぬ明るい雰囲気。しかし、一貫して和の趣きは保たれています。一階はカウンターがメインで、テーブルが一つ。二階もあるようですが、店内はかなり狭いです。

お料理は、精進定食を頂きました。ただ、これも少し前になるので、いまも置いているかは分かりません。しかし、お味の傾向は変わらないと思います。全体的に、非常に手の込んだ料理を食べさせてくれるお店だなって感じました。隅々まで心遣いが行き届いていて、全体的に品があるお味でした。おそらく、すべてがお店で手作りされていると思います。胡麻豆腐も、胡麻の風味の強い僕好みのお味でした。美味しい物を、少しずつ沢山の種類食べたい人には特にお勧め。

しかしながら、うどんやカレー、ルーローハンまでありますので、ガッツリ系の人もご安心下さい。

胡麻豆腐

僕は、高野山を同時に二つの聖地だと見なしています。一つは、言わずと知れた世界遺産としての密教の聖地。そして、もう一つが、胡麻豆腐好きの聖地なのです。高野山で食事をすれば、だいたい小鉢に乗った胡麻豆腐が現れます。ラーメンを頼んでも胡麻豆腐が付いてくるのです。ちなみに、高野山で豆腐と言えば高野豆腐が有名ですが、高野山で高野豆腐と出会うことは稀です。お土産屋さんにも置いていますが、「まあ、高野山だから高野豆腐でも置いとくか。たまに、高野豆腐が高野山の名物って思ってる人居るんだよなぁ」みたいな投げやりな態度です。

明らかに高野山発祥の食べ物で、高野という名前を冠してもいるにも関わらず、実のところ高野山では製造すらされていません。本来、高野豆腐は高野山で作られているから高野豆腐だったのです。とはあれ、僕が好きなのは胡麻豆腐であって高野豆腐ではないので、それは歓迎するべきことなのかも知れません。

ちなみに、胡麻豆腐は豆腐といっても、大豆を使って作ってる訳ではありません。胡麻と葛粉から作られる物で、稀に豆乳が使われることもありますが、胡麻豆腐の風味を豊かにし、食感を滑らかにするために少し使われるだけです。豆乳をにがりで固めて作る豆腐とは全く別物なのです。白くて、柔らかくて、四角いものは豆腐で良いやっていう思考停止した発想ですね。しかし、杏仁豆腐は四角くもないのに豆腐にされていることを思えば、まだ妥当なネーミングなのかも知れません。

胡麻豆腐 濱田屋

メインストリートを金剛三昧院の方に入った、少し奥まった場所にあります。店構えは非常に上品で、高級料亭?って雰囲気です。外観だけでなく、お店の中も非常に上品で綺麗です。お大師様に毎日御膳を届ける『生身供』にも供される老舗の名店です。

自宅やお土産としての持ち帰りが中心のお店ですが、店内で胡麻豆腐を頂くこともできます。種類はわさび醤油と和三盆の二種類が選べ、僕は両方頂きました。わさび醤油は、最もオーソドックスな食べ方で胡麻豆腐そのものの実力を試されますし、和三盆は優しい甘さが、胡麻の素朴な甘さと掛け合わされて包み込んでくれるような味わいです。流石としか言いようのない美味しさです。

わさび醤油
和三盆

間違いのない美味しさの胡麻豆腐なのですが、このお店で最も感動したのは、実はお味ではないのです。何というか、その『心』です。

弘法大師が入定された縁日である毎月21日には、来店したお客様に対して、胡麻豆腐が無料て振る舞われます。それだけ食べて、何も買わずに帰る人は少ないでしょうが、そうであってもお店としてはまったく構わないのだそうです。つまり、その胡麻豆腐は純粋なお店からの心なのです。

昨今の経済では、お金の移動だけが力としてカウントされます。どれだけ心のこもった素晴らしいものであっても、お金が動かなければ存在しないとみなされます。逆にそこら辺に漂っている空気ですらも、それをやりとりしたとみなしお金を動かせばGDPとして経済に組み込まれるのです。それでは単にお金を生み出すだけで、心が抜け落ちているように思えます。このお店には、お金じゃない、心を繋ぐものがあるように思いました。

森下商店総本舗

金剛峯寺前駐車場にも近く、メインストリートに面しており、とても便利な場所にあります。話はそれますが、高野山には金剛峯寺前駐車場を始め、沢山の無料駐車場があります。もし自家用車で訪問するなら、駐車場から駐車場を移動することで、効率的に主要なスポットを見て回ることができます。壇上伽藍なら中門前駐車場、霊宝館なら霊宝館駐車場、金剛峯寺なら金剛峯寺前駐車場の他に、金剛峯寺 第二駐車場というのも最近できました。奥之院に行きたいなら、中の橋駐車場が便利です。

もちろん、どうせなら自分の足で歩いて高野山の清浄な空気を感じて欲しいのですが、どうしても時間がないという方にはお勧め方法。時間が足りず切り上げてしまうよりは、よっぽど良いのではないかと思います。

と言ったところで、話を戻して森下商店総本舗ですが、胡麻豆腐を購入して、先ず感じるのは『重い』ということです。おそらく買った全員が、ビニール袋に入った箱の重さに戸惑うことになります。それもそのはずで、箱の中には隙間なく胡麻豆腐が詰められているのです。無意識的に、隙間の分を予想して手に取ってしまっているため、予測との差に驚く訳です。後から胡麻豆腐を箱に詰めたのではなく、箱の中で胡麻豆腐を固めたんじゃないかって思えるほどにギチギチに詰まっていました。

この店に関しては、持ち帰りのみで店内飲食はできません。お味の方は非常にシンプルで飾らず、素材の味を大切にしている感がしました。生胡麻豆腐と真空パック胡麻豆腐があり、やはり、ここは生胡麻豆腐だと思うのです。ただ、日持ちがしないので、保冷バックなどを持参し、帰りがけに買うことをお勧めします。ちなみに、お店は四時ごろには閉まってしまうので、それにしても慌ててもらうことになります。

角濱ごまとうふ総本舗飲食部

ここが、胡麻豆腐の聖地であることを実感させてくれるお店。胡麻豆腐には、こんなに沢山の可能性が潜在しているんだって驚かされます。胡麻豆腐の製造販売で有名な角濱ごまとうふ総本舗が運営している飲食部門です。胡麻豆腐を食材としたお料理をこれでもかって言うほど味わうことができます。そして、それらのお料理は胡麻豆腐の聖地・高野山だからこそのものであって、他では味わうことのできないものです。

最近ですが、姉妹店の小田原店ができ、以前からあったお店は大門店と呼ばれることになりました。大門店と小田原店を比べると若干メニューが違います。イメージですが、大門店の方がメニューが本格的で、小田原店の方が商品の販売スペースが広いと言う違いがあるように思います。しかし、味の傾向は同じなので、ピーク時のお客様の集中を分散させるためなのかもと感じました。

大門店の方では、角濱ごま豆腐金剛懐石角濱ごま豆腐胎蔵懐石というお料理を頂くことができます。それぞれが、金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅を胡麻豆腐で模っています。金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅は必ず二つで一つのとして飾られるものであって、その状態を両部曼荼羅、または両界曼荼羅と言い、イマジネーションによって密教の真髄を表します。

両部曼荼羅

僕は両方とも頂きましたが、内容はほぼほぼ同じでどちらかを食べれば十分かもと思います。しかし、高野山が好きな人ならやはり両部曼荼羅をコンプリートしたいところ。まあカップルで訪問しているなら、男性が金剛懐石、女性が胎蔵懐石を食べれば良いんだと思います。カップルってことは、そもそもになっているのですからね。後期の密教などを見てみれば、とはそういう意味なのです。

胎蔵懐石

お味の方は、胡麻豆腐好きには堪らない美味しさでです。だいたいは副菜としての扱いの胡麻豆腐をここではメイン料理として頂くことができます。そして、副菜ももちろん胡麻豆腐。先にも書きましたが、胡麻豆腐を素材とした様々なお料理を味わうことができ、胡麻豆腐だけでお腹いっぱいになれます。そんなの、胡麻豆腐好きには至福以外の何ものでもでもありません。まあ、生麩やがんもどきも入っていますが、それもまた美味しい。正に聖地だからこそ出会えるお味さでした。

ちなみに、小田原店の方では、スイーツとして胡麻豆腐を頂きました。わさび醤油でしか食べた経験のない人には驚きかも知れませんが、とても美味しく頂けます。まあ、すり胡麻を吉野葛で固めたものが胡麻豆腐ですから、スイーツとして美味しくないわけがないですけどね。写真は金ごまどうふで、きなこと黒蜜をかけて頂きます。きなこと黒蜜の甘さの向こうに、しっかりとした胡麻豆腐の味わいを感じることができます。

金ごまどうふ

どのお店の胡麻豆腐も、とっても美味しいですが、個人的には角濱の胡麻豆腐が一番好きかも知れません。ワイルドな胡麻の風味を、他のお店よりしっかり味わえるような気がするんです。胡麻豆腐を散々食べてきた人でも、「胡麻豆腐って、こんなに美味し食べ物なんだ!」って再認識できると思います。

精進料理以外のお勧め

高野山での食事といえば、どうしても精進料理になりがちです。宿坊では精進料理が振る舞われますし、外で食べるにしても精進料理が目を引きます。高野山を訪れるのは単なる観光ではなく、修行でもあるわけで、戒律を守った食事をすることも必要なのかも知れないとは思います。

しかしまあ、そこまで強い想いを抱いている人はまず居ません。やっぱり、食べたい物は食べたい訳です。そういう訳で、高野山には様々な食事が用意されています。逆に、精進料理だけのお店は少なく、精進料理とお肉や魚を選択できるお店がほとんどです。昨今の外国人観光客の増加により、ベジタリアンやビーガンといった方向性での菜食を扱うお店も増えてきている印象があります。ちなみに、仏教の開祖であるお釈迦さまは、豚肉にあたって亡くなった訳で、肉食を行っていたのです。仏教がいつから菜食を採用したのかは分かりません。

さらに、外国人に関しては中国人がほとんど居ません。奈良公園などは中国人で溢れかえっているのにです。ほとんどの外国人がヨーロッパ系の人種で、その中でもフランス人が半数ぐらいを占めているような感覚を受けます。どうやらフランスでは人気の観光地なのでしょうね。

かすうどんの河内屋

奥之院参道の始まりである一の橋の近くに、かすうどんの河内屋というお店があります。最近できたばかりの綺麗なお店で、扱ってるのはかすうどんだけのうどん屋さんです。

「かすうどんて何よ?」と仰る方もいらっしゃるでしょうから説明しますと、油カスのトッピングされたうどんを指します。油カスとは、牛の腸を加熱して油脂を抽出した後の残りカスを揚げたもので、大阪南部が発祥の食べ物です。下の写真のうどんの隙間に漂う、茶色い三角形の肉片、一見鰹節のようなものが油カスです。油は抜けているので油カスと言っても脂っこさはほぼなく、とにかく旨味の塊です。

ここまで聞くと、美味いんだろうけど品のないB級グルメだろうと思われるかも知れませんが、そのスープは正に旨味の芸術品です。

うどん出汁そのものの旨味、とろろ昆布の旨味、そして、油カスから溢れる旨味が重なり合って、旨味のオーケストラを奏でてくれます。

天風てらす

こちらも一の橋近くにあるお店です。外観は黒色メインの壁で、木材を多用した建物です。お洒落や可愛いというより、モダンな印象を受けるお店です。一階がお土産物、二階がカフェになっています。もちろん、店内も多くの木材が使われていました。滞在している間、木の香りかお香の香りか、ずっと良い香りに包まれ知らず知らずの内にリラックスしてしまっていました。お店の中に居るだけで、軽い瞑想状態になる感じです。

お料理は『米粉バンズのクラフトバーガープレート』と、『天風ブッダボウル』を頂きました。どちらもとても美味しかったです。

ハンバーガーのパテは、和牛と大豆ミートを選べ、菜食にも対応しています。僕は和牛を選びましたが、たっぷりな肉汁が堪らない美味しさでした。そして、他のお店のハンバーガーと圧倒的に違うところは、金山寺味噌が塗られているところ。

金山寺味噌は、由良にある興国寺に覚心という僧侶が、中国から製法を持ち帰ったもの。そしてこの金山寺味噌を作る過程で樽の底に溜まった副産物が醤油です。単純に考えれば、覚心がいなければ、金山寺味噌もなければ醤油もなかったことになります。ちなみに、興国寺は高野山金剛三味院の願生が、主君であった源実朝の菩提を弔うために創建したもので、創建時は真言宗寺院で西方寺と称していました。

和牛の肉汁の力強さを、味噌の力強さが受け止めてくれます。そして、発酵食品同士だからか、味噌とチーズの相性も抜群です。他では食べたことのない強力なチーム結成といったところです。

そして、写真のブッダボールは、そもそも菜食のメニューになります。フムスというひよこ豆のペーストをパンと一緒に食べる料理です。副菜も非常に美味しく、初めて食べたものなので好奇心も満たされます。心とお腹と体が喜ぶお料理でした。それ以外のメニューも精進料理や伝統的な和食ではないですが、高野山やその周辺の食材がふんだんに取り入れられ、高野山を丸齧りしているような気分になります。

かなりの長文になってしまいましたが、高野山グルメはまだまだ終わらない。なんと『高野山グルメ 喫茶・スイーツ編』に続きます。

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