AIは、自由意志を笑うのか。

スピリチュアル

 AIがもてはやされる昨今ですが、AIをヒントに人間の自由意志ないし意思は存在するのかを考えてみたいと思います。

現代のAIは、人類が憧れたAIなのか

 そもそもAIとは何かと言うことなのですが、その前に気を付けておきたいのは、僕たちが映画などで親しんできたAI=人工知能という概念と、現在のAIとではその定義が変わってしまっているということです。つまり、それは別物なのです。

 僕たちか映画などで親しんできたAI、つまり人工知能は意志を持っていました。まあ、だいたいその意志は人類滅亡のために費やされるのですが、少なくとも人間と同じような意志を持っていたのです。だからこそ、それはAI=人工知能と呼ばれた訳です。

 フランケンシュタインの怪物や、錬金術のホムンクルス、そして人工知能としてのAI。どうやら、人間には、自分の複製として同じ価値を持つ存在を作り出そうと、情熱を燃やす傾向があるようです。この衝動を、SF作家のアイザック・アシモフは、文字通りフランケンシュタイン・コンプレックスと名付けました。それは、創造主への挑戦か、創造物に過ぎない人間という性から、創造主という立場への脱出なのかも知れないとさえ思えます。

 そう、つまり人工知能とは、スピルバーグが監督した、まさにAIというタイトルの映画の主人公がそうであったように、人間と同様に自らの意志を持つものだったのです。

現代のAIに足らないものは何なのか

 それらの人口知能と比較すると、現代のAIは人工知能ではないと言わざるを得ないと思います。別に人間よりも馬鹿であるとは言いません。おそらく、特定の分野においては、人間の何倍も優れていることでしょう。ただ、そこには決定的に意志が存在していないのです。

 今のところ、AIは出来の良いただのプログラム過ぎません。もし、AIを搭載したアンドロイドが外出しようとしたとき雨が降っていたなら、濡れないように傘を差す選択をするでしょう。そして人間もまた外出しようとしたとき雨が降っていたなら,濡れないように傘を差すことを選択をします。もし、そのAIが言語による思考によって行動を決定するプログラムを搭載しているのなら、人間の頭脳の中と、AIのコンピューターの回路の中で起こる思考は同じです。

 外出しよう→雨が降っている→濡れないようにしなければならない→傘を持って行こう、と言った具合です。

 思考そのものと、思考の経緯が同じでも、そこには決定的な違いがあります。AIには意志が存在していないのです。そこにはただプログラムが走っているだけです。では、何故意志が存在しないと言えるのかという疑問が沸くかと思います。その疑問に対する答えは、AIには思考を認識し決定する主体としての『私』が存在していないからなのです。

 そこに、『私』が存在しなければ、思考は何処からともなく沸き出しては消えていくだけです。『私はいない』ということを提唱するノンデュアリティ界隈の人は、「思考はただ湧いてるだけ」と言います。確かに私の存在を否定するなら、思考はただ湧いているだけに思えることでしょう。しかし、私は存在するのです。

私があるから、自由意志は存在している

 ここからは直感的に理解してもらいたいのですが、『私』を持つからこそ、思考は意志という主体性を持ち、物事を決定する原因となることができます。そして、ここでいう『私』というのは単なる自我のことではなく、自己の中心としての真我です。真我は真理であり、何者にも依存せず存在として自由で、だからこそ、その意志は他者の影響を受けず自由なのです。

 今のところ、AIは『私』を持つことができません。僕たちが日常生活の中で、ウンザリするほど向き合わされ続ける『私』を、科学は解明できていません。映画などの中でも、稲妻に打たれるような超自然的な力によって、それは獲得されるに過ぎません。当然、解明されていない『私』を、科学者は再現することができないのです。時として、AIがあたかも『私』を持っているように思える時もありますが、それはただ持っている風を装うプログラムが動いているだけです。

 おそらく私には、『私』を想像することはできないのです。お陰さまでと言うべきか、幸いにと言うべきか、後しばらくの間、僕たちは、AIの反乱による人類滅亡の恐怖に怯える必要はなさそうなのです。

 さて、ここまで人間の意志、とりわけ自由意志を肯定する形でお話ししてきましたが、次は自由意志は存在しないという論点からお話ししてみたいと思います。

 真我を持ち出してまで肯定した自由意志を、そう容易く否定してしまうのかと驚く方も居ると思いますが、自由意志が存在するということと、自由意志は存在しないということは、レイヤーの違いを考慮することで共存できると思うのです。そう言う訳で、この話はもうしばらく続くことになります。

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