このブログでも何度かお話ししている岡本直人さんの主催するオンライン講座に参加してみました。今回はその内容と感想を紹介していきたいと思います。
岡本直人さんに関して
先ず、岡本直人さんってどんな人?って疑問に対してお答えすると、ヨーガ・インストラクター、猫好き、ヨガ哲学・瞑想講師、YouTuberなど多岐に渡って活躍されています。余りにも多岐に渡り過ぎて、ご本人も理解できていないのではないかと思うのですが、活動のベースはインド・ヨガ哲学です。
もちろん、同じようなジャンルで活躍している人は多いですが、岡本さんの特徴として、事実を事実として伝え、知識を知識として伝えようとするところにあると思います。自説に拘るあまり、事実を捻じ曲げたり、知識を歪めたりすることはありません。自分を飾るようなこともしません。もちろん普通の人間ですので聖人君子という訳にはいきませんが、まあ簡単に言えば信頼にたる人物であるということです。そういう意味では、他の精神世界の怪しい面々とは一線を画していると思います。
オンライン講座の概要
今回、僕が受講したのは、『はじめてのヨーガ心理学オンライン講座』というカリキュラムでした。ヨーガ心理学とは、古典ヨガの経典に記されている精神的な教えや瞑想法を、現代人にとって分かりやすい体系に構築し直したものであり、現代人の幸福と自分らしい生き方を、東洋的な観点から問い直していく試みでもあります。同じテーマを扱ったものには、『やさしく学ぶヨガの心理学』が書籍として出版もされていて、僕も読ませていただきました。このブログでも『やさしく学ぶヨガの心理学を読んで』という記事でレビューさせて頂いています。
ヨーガ心理学という同じテーマを扱っているのですから、内容自体は良く似たものとなっています。しかし、もちろん全く同じという訳ではなく、書籍の方が幸福と不幸の相対性を中心にヨーガ心理学の全体を解説し、講座の方が輪廻を中心に説明しているという印象でした。ヨーガ心理学のどの部分にフォーカスしているか、どの部分にウェートを置いているかという違いに感じました。オンライン講座を受講するに当たって、テキストは配布されますが、予習として書籍の方を読んでおくのも良いかも知れません。
ちなみに、オンライン講座はzoomで開催され、録画されることで、後日見返すこともできます。疑問点などが出てくれば、その都度確認することができます。僕が参加した時点では、週一回、三回の開催でした。ただ、その内の数日参加できなくとも、録画された内容を観ることは可能です。もちろん、zoomを使って講座を受け、その内容が録画されるのですから、クローズドな環境とは言え、他の参加者に顔が見え、それが録画されてしまうことを気にする方もいると思います。ただ、それも問題ありません。講座に空気感が生まれますし、他の参加者のリアクションも刺激になりますので、僕は出来るだけ顔出しすることをお勧めしますが、半数程度の人はカメラ機能をオフにして顔を出さずに参加してらっしゃいました。
常識からの解放
僕は、あなたにヨーガ心理学の講座に参加してもらいたくてこの記事を書いています。ですので、詳しい内容には踏み込みません。詳しい内容に関しては、『はじめてのヨーガ心理学オンライン講座』の方を受講して下さい。とは言え、まったく内容に触れないのでは、お勧めすることもできないので簡単に説明していきます。
この講座では、輪廻が前提になっています。日本人なら説明するまでもないですが、生まれ変わりってやつですね。その輪廻の思想を積極的に人生に組み込むことによって、僕たちの価値観を変えていこうとします。それはさながら常識という思い込み込みからの解放と言っても良いものです。例えば、自分とは何かということや、他人と比較して劣等感や優越感、盲目的に従ってしまっている社会的ルール。輪廻という考えを人生に導き入れ、組み込むことにより、長年に渡りあなたを縛り付けてきた思い込みは、いとも容易く瓦解します。ここで一番難しいのは、あなたが解放されることより、解放されるために輪廻という考えを受け入れることではないかとさえ思えるのです。
繰り返しますが、既存の価値観から解放され、新しい価値を受け入れることは、輪廻ということを受け入れればさして難しくないのです。ただ、そのために輪廻を事実として受け入れる方が余程難しいのではないかと思うのです。理由はやはり既存の価値観、近代西洋唯物論的な価値観にあります。証明されていないもの、根拠のないものを信じるのは愚かな行為であるとされているからなのです。ここで、堂々巡りの袋小路に行き詰まってしまう人もいるかも知れません。要は、輪廻を信じることで変化させるべきものが、輪廻を信じる邪魔をしてしまうのです。
※
僕は輪廻を信じていますので何の問題もなかったですが、もし輪廻を信じられないという人がいるなら、少し発想を変えてみても良いのかも知れないと思いました。輪廻があると仮定して、その仮定に基づいてヨーガ心理学の考え方を導入してみれば良いのです。それでも、あなたの生き方は少なからず変わるはずです。そして、その変化した地点からもう一度、輪廻というものを考え直してみれば良いのではないかと思うのです。
俳優やミュージシャンとして有名な武田鉄矢という人がいます。実はとても勉強家の人で、ラジオ番組の中で「どんなに本を読んでも学びきれない。残された人生の中で答えに辿り着けないことは分かっている。それなら何故勉強し続け本を読むのだろう。きっと来世にもこの続きを勉強するから、今も勉強していると考えた方がしっくりくる」というようなことを言っていました。武田鉄矢さんは、来世があるから、いま勉強しているのではなく、いま勉強したいから、輪廻による来世を仮定せざるを得なくなったのです。論理的に、発想が逆転しているのです。おそらく鉄矢さんの人生が終わりに近付けは近付くほど、輪廻という現象に対する確信は強まっていくことでしょう。
発想の転換
講義が進むに連れ、今まで縋ってきたものの価値の転換は、より加速していきます。その最たるものが『喜びと苦しみは相対的なものである』という考え方です。この発想は『やさしく学ぶヨガの心理学』の中でも出てきました。そちらの方では、輪廻よりもこちらの方に、重心が傾けられているという印象を受けました。
簡単に言うと、喜びと苦しみは相対的な関係にあり、どちらか一方だけでは成り立たない。喜びがあれば、いずれ苦しみが訪れるし、苦しみがあれば喜びもいずれ必ず訪れるます。つまり、苦しみは喜びの原因ですし、喜びは苦しみの原因なのです。ここで重要なのは、絶対的な価値という思い込みから、相対的な価値という事実の受容です。これは時として痛みを伴います。何しろ苦しみは避けられないのです。ヨーガ心理学では、喜びや苦しみへの偏りを減らし、中間的な生き方を勧めていました。
この相対性もまた、実のところ輪廻と関係していきます。そして、この部分が、僕の最も驚いた部分であり発見でした。岡本さんは「もし、輪廻がなければ、人は成功した人生しか選択できなくなる」と言うのです。僕は、『そんなの当たり前じゃん。失敗の人生なんて選択肢はない。みんな成功すことだけを目指して生きているんだ』って感じました。一度切りの人生に失敗は許されないのです。しかし、僕たちの人生のスパンを、相対性を考慮して考えればどうでしょう。成功だけの人生はあり得ないのです。死の間際に俯瞰して観れば、あなたの人生が失敗人生である確率は五分五分なのです。
しかし、輪廻の発想を取り入れれば、失敗の人生だとしても受け入れることはできるのです。僕は先に『一度切りの人生に失敗は許されない』と書きました。そうなのです、もし輪廻の思想を受け入れて、人生が一度切りではないとすれば、失敗の人生も良い経験として受け入れることはできるのです。もちろん、あえて失敗する人生を選ぶ必要はないと思いますが、受け入れることはできます。それは、より余裕を持った人生との向き合い方です。勝つことに執着する必要もなく、負け犬の存在しない、より大らかな人生のようにも思えるのです。
人生の拡大と本質への回帰
もはや、快不快の原則は方向性を示さず、既存の西洋唯物論的な価値観からもあなたは自由です。しかし、今までそれらに縛られてきたということは、それを支えにしてきたということでもあります。生きている以上、何らかの行動の指針となるようなものが必要かと思います。そうでなくては、知的迷子か、ヒモの切れた風船のように無為に彷徨いかねません。それは自由という虚しさの囚人のようでもあります。ただ、ヨーガ心理学では、それに対してもある程度の方向性を示してくれます。
そこで提案される生き方は、この人生に留まるものではありません。複数の人生を通して、一貫して自己の魂を高めていこうとする生き方です。具体的な方法は、ここでは書きません。ぜひ講座を受講して下さいというところなのですが、僕には古来日本人がそうした生き方をしてきたようにも思えました。日本に、西洋的価値観が導入され近代化される以前、お金や合理主義、そして個人主義が僕たちの中心的価値として居座る以前、僕たちが科学の奴隷に成り下がる以前の状態に戻ろうとしているのかも知れないとも感じました。
それは、『おかげさま』という心であったり、『お先にどうぞ』といった個人を優先しない価値観であったり、『徳を積む』などといった、既に滅びたように思える価値です。目先の利益に対してではなく、そして、この人生に対してですらなく、遠い未来のために行われる投資のようなものです。その時、それは個人の人生という時間の長さに閉じ込められることはありません、人生は過去と未来に拡大され僕たちはより大きな、そしてより本質的な課題に取り組むことができるのです。
魂のルネサンス
『はじめてのヨーガ心理学オンライン講座』を受講してみて、僕は『ルネサンス』のことを思い起こしていました。ルネサンスとは、14〜16世紀におけるヨーロッパで起こった文化運動で、フランス語で『再生』『復興』を意味します。古代ギリシャ・ローマの文化を復興しようとしようとしたのです。当時、ヨーロッパは中世と呼ばれる時代で、キリスト教の力が強過ぎて、社会が硬直化した時代だったのです。千年続いたその停滞を打ち破ったのが、ルネサンスです。その結果、中世は終わり、新しく近代が始まり、文明は著しく発達しました(ダ・ヴィンチやミケランジェロの活躍は、教科書でも学び、肖像画なども見たことがあると思います)。
それと同じようなことが起こっているのではないかと思うのです。ルネサンスでは、硬直化した中世という精神の停滞を乗り越えるために、古代ギリシャ・ローマに習わなければならなかったのです。近代という新しい時代を迎えるにあたって古いものを参考にするのは、意地の悪い皮肉にすら思えるのですが、余りにも当然のように染み込んだ悪癖を断ち切るためには、それに影響されていない状態から、もう一度見直してみなければならなかったのかも知れません。
同じ人間なのですから、僕たち現代人にとってもそうなのではないでしょうか。西洋合理主義的・唯物論的価値(それはルネサンスの結果もたらされたものですが)に精神を支配され、その事実にすら気付いていない僕たちが、その拘束を打ち破るためには、いったんそれに影響されていない古代の眼差しをもって世界を見詰め直す必要があるのではないかと感じるのです。それではその眼差しとは何か?という疑問に関しては、古代の東洋思想なのではないかと感じます。近代という時代はルネサンスにより始まり、ルネサンスは西洋の古代であるギリシャ・ローマを基にしています。それならば、それにカウンターとしての働きをできる古代は、インドを中心として起こった東洋の思想体系をおいて他にないと感じられても不思議ではありません。
多少空想が過ぎたかも知れませんね。もちろん、この『はじめてのヨーガ心理学オンライン講座』のことを、「これは現代人に与えられた、魂のルネサンスだ!」などと言うつもりはありません。それを言い出す者が居るなら、おそらく誇大妄想に取り憑かれてしまっていることでしょう。ほんの少しだけ、彼をそっとしておいてあげて下さい。しかしながら、そうではないと断定できる者が、誰も居ないのもまた事実です。もしこの講座に参加しておけば、輪廻して、来世で歴史の教科書を開いたとき、あなたはそこにあなたの姿を見ることになるかも知れません。まあ、今のところもちろんジョークではありますが……。
※
今の人生に行き詰まっているように感じる方、新しい価値観、そして生き方の方向性を探されている方には特にお勧めです。下に貼り付けた写真をクリックしてもらえれば、申し込みページに飛ぶことができます。知らない知識、知らない人と出会えますから、興味本位で参加してみても結構楽しいと思いますよ。


コメント