無から有は生じるか② -ホーキング博士の穴-

精神世界

この記事は、『無から有は生じるか① -創世神話-』という記事からの続きになります。先ずは、そちらの方からお読み下さい。

前回の記事では、どうすれば無から有が生じるのかを具体的にお伝えすると書いて終わりました。続きにあたるこの記事では、早速その方法を書いていきます。

ホーキング博士曰く

穴を掘れば良いのです。

『えっ?』っと思われた方がほとんどだと思います。ちょっと待って下さい。まだブラウザを閉じないで下さい。これから面白くなってきます。

この『穴を掘れば良い』という考えは、完全に同意しているだけで、僕の思い付いたものではありません。車椅子の天才物理学者、スティーヴン・ホーキング博士が『無から有は生じるか?』というインタビュアーからの質問に対して答えた解答なのです。どうですか? もう少しこの話を聞いてみようという気持ちになってきたでしょ?

ホーキング博士は、「その可能性があるとするなら……」と断りを入れた後に答えています。つまり、天才の頭脳を持ってしても推測の域を出ていないということです。しかしながら、その推測は、やはり天才と言われる頭脳を総動員してもたらされているはずです。

先ず無の中に、高さを0と定義した平らな地面を仮定します。そして、この地面に土を使って小山を作ります。この作られた小山が『有』です。ここまでは、何の問題もなく理解できると思います。単なるエネルギー保存の法則の範囲内です。何処かから運んできた土砂を置いているだけで、埋め立て工事と変わりません。

無に無の穴を掘る

ただ、ここで問題が発生します。『その土砂を、何処から持ってくるのか』ということです。何しろ、有の存在しない無の中なのですから、持ってくる『有』がないのです。そこで、ホーキング博士の言ったことが『穴を掘る』という解答なのです。

つまり、高さ0の地面に、高さ1の小山=有を作るためには、−1の穴を掘りその土砂を積み上げれば良いのです。もし、5メートルの小山を作りたければ、5メートルの深さの穴を掘れば良いし、それが100000メートルの高さなら、100000メートル分の穴を掘れば良いのです。そうであるなら、有は制限なく生じさせることができます。

もちろん、ここで穴を掘るとか、山を作るという表現は象徴的表現に過ぎません。そもそも、無自体が象徴的表現であり、『無がある』などという言い方はまったく持ってナンセンスなのです。もう一度断っておきますが、すべてが象徴表現に過ぎず、無なんてものは鼻から無いのです。それを、一つの概念として語ってしまうと、あたかもそれが存在してしまうように感じてしまうことがあります。有である我々には無いということを実感するのは不可能と言って良いのです。もちろん、そのようなことは天才ホーキング博士は百も承知で、比喩を使っているのです。僕もまた、勘違いを招く言い方をじゃんじゃんしていくことになります。

上の図を見ていただければ、有ができたのと同じだけ穴が開いているのに気付かれるかと思います。ただ、それも象徴的表現をそのまま受け取ってしまったために起こる勘違いです。それはそもそも無なのです。そこにあるのは有だけだということもできます。それでも、無が概念として存在しているのは、有が存在してからだと言うこともできます。

ちなみに、有のなかったときの無と、有を存在させるための無を比較して違いがあるのかという疑問に対して、僕は違いはないと思います。ただ、若干うろ覚えで申し訳ないのですが、仏教哲学者として高名な鈴木大拙氏(1870〜1966)は、しかしながら「有ができる前の無を絶対無として、いわゆる無と分けたほうが良いのではないか」と著作の中で仰っていました。

ホーキング博士の0の地面と数字の列

ここで、無から有を生み出せるのかという問いに対するホーキング博士の答えをおさらいしておきます。

1 無に、0としての地面を仮定する。

2 その地面に穴を掘る。-1

3 掘った土砂を地面に積む。+1 つまり、有が生じる。

と言った具合です。理解を深めるために、少し違った表現をしてみます。

……-2・-1・0・+1・+2……

出来るだけシンプルに、ホーキング博士の伝えようとしたことを、僕なりに表現してみました。真ん中の0は地面であり、左側の-の数字は、有を生み出すために掘った穴であり、有の対極としての無です。そして数字は永遠と続きます。

0の地面を挟んだ+の数字は無の対極としての有です。こちらの数字も永遠と続きます。ただ、穴としての無の分だけ、有としての小山ができるのですから、有と無の数字の数は常に同じで、完全に釣り合い、対をなしています。

次の記事・『無から有は生じるか③ -万物斉同・空と道-』では、この数字の列を使って、もう少し説明を深めていきたいと思います。

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