この記事は、『台灣 × XZ-10 = 台中で歴史を学ぶ』からの続きになります。先ずは、そちらの方からお読み下さい。
そのバスはドリフトを決める
そういう訳で、早朝に起き出し食事をした後、バスに乗って次の目的地に向かいます。とりあえず、今回の旅における目的と言えるようなものは、それしかなかったのです。
ちなみに、台湾での移動には悠遊カードが便利です。いわゆる交通系ICカードで、MRTはもちろん、台鉄やバス、コンビニの支払いなどにも利用できます。今回は、マクドナルドでも使ってみましたが、もちろん問題なく使えました。先ずは悠遊カードを作る必要がありますが、それも色々な場所に設置されている自動販売機や、桃園国際空港内の窓口で作ることができます。飛行機で到着したら、直ぐに窓口で手続きするのが正解ですね。台湾を旅するための、自由の翼が手に入ります。
次の目的地までは、直通バスで一時間半程度だったと思います。ちなみに台湾のバスについてなのですが、おそらく台湾の公共交通機関の中で最低のクオリティです。ドライバーはおっさんで愛想がなく、なんとなくいつも不機嫌な顔をしています。まあ、それでも良いです。しかし、問題なのは運転です。街中を抜けて、山間部の曲がりくねった道に差し掛かると、いきなり『走り屋の魂』が目を覚ますのです。何が彼らを駆り立てているのかは分からないですが、もの凄いスピードでコーナーに突っ込んでいきます。さながら『頭文字D』を見るようで、『えっ? いまドリフトしたよね? このバス、ドリフトしたよね?』ってなります。
とまぁ、いろいろあって、バスに酔って少し気分が悪くなったところで目的地に到着。途中のバス停で降りるときは、座席近くにあるチャイムを出来るだけ早めに押してください。そんな感じで飛ばしているので、バスは急には止まれません。
モノミスごっこ

これがその目的地。英雄の旅の目的地と言えば、魔王の住む城と相場は決まっているのです。実はお城を模したリゾートホテルの一部だったんですけど、今は廃墟になっています。実際、廃墟マニアからは『クッパ城』と呼ばれている物件です。ゲームのスーパーマリオブラザースに出て来るラスボスの待ち構えているお城ですね。
当然ですが、ゲームもストーリーを持ち、ストーリーはモノミスの構造を持つのです。モノミスとは、英雄の旅、または単一神話、神話の原形、原質神話と呼ばれるもので、あらゆる文明における神話には共通のパターンがあるという理論です。
そして、あらゆる物語はこのパターンに沿っているといっても過言ではありません。それが、クッパ大魔王を倒しピーチ姫を救出するという英雄譚ならなおさらです。このモノミス理論に関しては、十牛図と英雄の旅という記事に詳しく書いてありますので、そちらも併せてお読み下さい。

そして、この旅をモノミスの理論に当てはめて見てみると、その見え方はまるで変わってくるのです。例えば、台中で廃墟の存在に気付き、しかし内部に入らなかったのは、英雄の旅における冒険への召喚や、十牛図における見跡や見牛に当たるかも知れません。何故なら、僕は廃墟の存在を知り、しかし内部に入らなかったことにより、更なる廃墟を探し求めるようになったからです。
まあ、既にもの凄く無理のある解釈ではあるのですが、さらに無理矢理、自分の旅をモノミスの構造に当てはめてみることにしました。そうするなら、酷くバスに揺られダメージを負ったこともテストであったり得牛と見なすこともできます。まあ、今回の台湾旅行をモノミスの構造に当てはめ、冒険気分を楽しんでみようという遊びですね。僕はこの遊びを『モノミスごっこ』と名付けました。無論、遊びではあるのですが、多くの文化や文明で神話を模すことはイニシエーションとして行われています。つまり、みずからが神話の象徴となって旅をしてみるのです。
XZ-10様は、聖剣エクスカリバーへ
しかし、これが英雄の旅であるなら、選ばれし勇者だけが使える武器が必要になります。つまり、伝説の勇者の剣のようなものですね。そして、写真を撮る者にとって、特にスナップ写真において写真を撮る行為はshootであり、狩りです。つまり、この旅においては、写真を撮る行為が魔王を倒す行為であり、写真を撮る道具が英雄に与えられた武器なのです。
そういう訳で、XZ-10様は台湾の廃墟で英雄の剣・エクスカリバーへと姿を変えるのです。見向きもさらず投げ売りされていたXZ-10は、ベトナムの裏路地でXZ-10様へと変わり、更に台湾の廃墟で遂に聖剣XZ-10エクスカリバーという最終形態へと進化したのでした。それはXZ-10が持っていた本来の姿に覚醒したと言っても過言ではないのかも知れません。ともかく、もの凄い出世です。
そういう訳で、ラスボスを倒すために先ずは中ボスから倒すことにします。まあ、モノミスごっこですから……。
クッパ城と呼ばれる廃墟の直ぐ横には、UFO型住宅と呼ばれる廃墟があるのです。先ずは、その廃墟から写真を撮っていきます。すみません、設定間違えました。倒していきます!

これがUFO型住宅と呼ばれる廃墟。周辺には同様の廃墟がたくさん建っています。1970年代初期、大規模なリゾート開発が行われ、その際に建てられたFUTURO(フトゥロ)というフィンランドの建築家によりデザインされ、世界中で建設された建物のようです。日本にも、同様の建物が廃墟化しています。



台中の千越大楼という廃墟では、外側の一部を写真に収めただけでしたが、UFO型住宅は完全に克服します。覚醒を果たしたXZ-10エクスカリバーの前では敵ですらありません。
クッパ城と待ち構える試練
あらかたの敵を倒し終わった後は、魔王の待つクッパ城へと向かいます。しかし、城は侵入者を拒み、城壁といえる緑色のバリケードが周囲を取り囲み、入り口は完全に塞がれています。


それもまた、英雄に与えられた克服すべき試練なのです。
やっとの想いで城の内部に侵入しますが、そこでも試練は次々と襲い掛かってくるのです。とにかくXZ-10エクスカリバーの広角端が足りない。内部の構造が巨大過ぎて、かなり撮影アングルを工夫しないと写真に収まり切らないのです。



クッパ城の大ホール的な場所です。ただ、どの様な目的に使われていたのかは謎です。実際のところ、クッパ城は近隣のホテルの一部で、宿泊施設というよりは、おそらく宿泊施設に併設されたレクリエーション施設だったのではないかと思います。とにかく規模が大きく、XZ-10エクスカリバーの広角端26ミリという能力を持ってしても、なかなか全体が収まらず、ギュウギュウ詰め写真です。



秘められた深淵たるアビス
神話の構造を辿りながら、魔王の潜む深淵たるアビスへと向かいます。そして到達した場所がこちら。

とても美しい光景だと思いました。確かに、魂の変容が起こる地下神殿といった感じでした。子宮とも言い換えられる空間は、神聖な空気で満たされていました。
何とか写真を撮ろうとするのですが、暗い場所の苦手なXZ-10にとっては、いくらエクスカリバーに覚醒したからといって苦しい戦いになります。

上の二枚の写真は、XZ-10エクスカリバーの限界ギリギリと、僕の能力の限界ギリギリを少し超えて撮った写真。まあ、それなりに美しい写真が撮れたのではないかと思っています。と言うわけで、モノミスごっこ的には魔王を倒し、英雄の帰還へ至ることになりました。
英雄の帰還
現実の世界に帰還を果たした後、戦いで負った傷を温泉に入って癒します。モノミスにおいては霊薬や、十牛図においては返本還源の段階ですね。




レトロと言うか、ボロいと言うか、非常に趣きのある温泉施設でした。泉質も良く体の芯まで温まり、リラックスすることができました。もちろん、日本統治時代に開発されたのですが、台湾は温泉大国なのです。多くの温泉では水着を着るのですが、一部では日式、つまり全裸になって入浴することのできる銭湯もあります。ここは、個室になっているので、当然日式での入浴です。
※
モノミスごっこ。まあ、遊びだけど、神話の中に飛び込んでいるみたいで楽しかったです。今回は、撮影対象がお城だったから、『モノミスごっこ』と特別に呼んでみましたが、廃墟探索に限らず、どの旅も同じような経緯を辿ります。若干の危険と向き合い、リスクを背負って、その旅の最深部たるアビスへ向かいます。そして、宝物である最高の何かと出会おうと踠くのです。
いわゆる『ごっこ遊び』を通して、子供は大人の立場をイマジネーションの力でトレースしながら共感し共有していきます。それは、ファンタジーの世界で大人になり、大人とは何かという学びを現実世界に持ち帰り、成長に繋げる行為です。つまり、架空の世界とのファンタジックな繋がりにより、人は現実の世界を生きているのです。
僕が旅が好きなのは、モノミスの構造を辿って神話の世界を訪れることができるからかも知れないなと感じました。ファンタジーの力により、それこそファンタジーを代表する神話的世界で遊びたいという欲求が、旅する心の根底に動機としてあるのではないかと思います。そして、あわよくば、英雄として魂の成長を欲しているのかも知れないのです。
『台灣 × XZ-10 = 新たなる旅路』へ続きます
コメント